不妊治療と仕事の両立。
終わりが見えないトンネルの中で、出口を求めてもがいているような毎日。
私は、不妊治療に専念するためそして何より自分自身の心と体を取り戻すために、長年勤めた正社員の仕事を辞め、パートという働き方を選びました。
この決断が正しかったのか、今でも自問自答することはあります。
でも、確実に言えるのは、働き方を変えたことで「心の余裕」が生まれ、不妊治療との向き合い方、そして日々の生活が大きく変わったということです。
この体験談が、仕事と不妊治療の狭間で揺れているあなたの心に少しでも寄り添い、「こんな選択肢もあるんだ」と、ほんの少しでも肩の荷を下ろすきっかけになれば嬉しいです。
追われる日々…正社員時代の仕事と不妊治療の両立
社内SEとしての多忙な毎日
私は、社内SEとして正社員で働いていました。
基本は朝8時過ぎから夕方5時までの勤務でしたが、作成したプログラムの初回稼働がある日は早朝6時から、あるいは夜10時までという変則的なシフトもありました。
残業も日常的で、多い時は月に30~45時間。不妊治療を始めてからは上司に相談し、月10時間程度に配慮してもらってはいましたが、それでも心身への負担は大きかったです。
立ちはだかった「3つの壁」
不妊治療との両立は、想像以上に過酷でした。
通院時間の確保という壁
私の通っていたクリニックは、自宅から1時間かかる場所にありました。会社も自宅から50分。つまり、仕事の日に通院するとなると、会社とは逆方向へ長距離移動し、また会社へ戻るというだけで一苦労。
特に採卵周期などは、いつ「明日来てください」と言われるか分からず、急な通院に対応するために、常に仕事の調整や同僚への気遣いがつきまといました。
体力的な壁
残業が減ったとはいえ、日々の業務と不規則な通院、そして長距離移動。週末は寝て過ごすだけ…なんてことも珍しくありませんでした。
精神的な壁:これが一番辛かった…
治療が思うように進まない焦りやストレス。それに加えて、職場で聞こえてくる「〇〇さんが産休に入ります」という報告。

おめでたいことだと頭では分かっていても、素直に喜べない自分がいました。
さらに、その産休に入る方の業務のリカバリーを任されることもあり、複雑な気持ちを抱えながら仕事をしていました。
「みんな残業しているのに、私だけ早く帰ったり、休んだりして申し訳ない…」
上司は理解を示し、仕事量の調整もしてくれましたが、常に周囲への罪悪感と申し訳なさでいっぱいでした。
「もう限界かもしれない」心が悲鳴をあげた日
そんな日々が続き、ついに心身のバランスを崩してしまいました。
ストレスからか体調を崩すことが増え、不妊治療はお休みすることになる始末。
治療のために頑張っているのに、その頑張りが原因で治療を中断せざるを得ないなんて、本末転倒ですよね。
この時、「もう、このままではダメだ」と、本気で働き方を変えることを考え始めました。
退職という大きな決断:不安と、夫の温かい言葉
退職への葛藤:キャリア、お金、社会との繋がり
仕事を辞める。
それは、私にとって簡単な決断ではありませんでした。
- 経済的な不安: 正社員としての安定した収入を手放すことへの恐怖。
- 社会との繋がり: 仕事を辞めたら、社会から取り残されてしまうのではないかという孤独感。
- 周囲の目: 「不妊治療のために仕事辞めるなんて甘えてる」そう思われるんじゃないかという不安。
たくさんの葛藤が頭の中を駆け巡りました。
背中を押してくれた夫の言葉
そんな時、背中を押してくれたのは夫の言葉でした。
「無理しなくていいよ。辞めてもいい。まずはゆっくり休んで」
いつも私の体調を気遣い、治療にも協力的だった夫。彼のその言葉に、どれだけ救われたか分かりません。
会社には、本当の理由を伝える勇気が持てず、「夫の仕事の都合で…」と伝え、退職しました。
パートという新しい選択:心と時間に生まれた「余白」
私がパートを選んだ理由
退職後、少し休んでから、私は在宅でできるカスタマーサポート調査のパートを始めました。
週3日、1日5時間(10時~15時)という、以前とは比べ物にならないくらいゆったりとした働き方です。
この働き方を選んだのは、
- 時間の融通がきくこと
- 体力的な負担が少ないこと
- 精神的な余裕を持てること
これらが何よりも治療との両立に繋がると考えたからです。
パートになって劇的に変わったこと
働き方を変えたことで、私の生活と不妊治療との向き合い方は劇的に変わりました。
- 通院が格段にしやすくなった!
急な通院や長時間の診察も、以前のように仕事の心配をしたり、罪悪感を感じたりすることなく、落ち着いて臨めるようになりました。 - 精神的な余裕が生まれた!
「〇時までに会社に戻らなきゃ」「明日の仕事どうしよう…」そんな焦りから解放され、治療そのものに集中できるように。心が穏やかになったことで、体調も安定してきたように感じます。 - 自分と向き合う時間ができた!
時間に追われる生活から一転、自分の体調や心の声に耳を傾ける余裕が生まれました。
思わぬ癒しとの出会い:新しい家族
そして、大きな変化がもう一つ。
新しい家族として、猫ちゃんを迎えました。
以前の私には考えられなかった心の余裕が、こんな素敵な出会いを運んできてくれたのかもしれません。
日々の何気ない仕草に癒され、心が温かくなるのを感じています。
パートのリアル:メリットだけじゃない現実と、これからの私


パート主婦のリアルな悩み
もちろん、パートという働き方は良いことばかりではありません。
- 社会との繋がりの変化
正社員時代のように、毎日たくさんの人と関わる機会は減りました。ふとした瞬間に孤独を感じたり、社会から取り残されたような気持ちになったりすることも。 - キャリアへの不安
「このままでいいのかな」「また正社員として働ける日が来るのかな」と、将来のキャリアに対する漠然とした不安は常にあります。
収入減と向き合う日々:扶養内で治療費を賄う工夫
そして、一番大きな変化は経済面です。
当然ながら、収入は以前より減りました。現在は夫の扶養に入り、扶養内で稼げる月10万円ほどの収入です。
幸い、自分のパート代で不妊治療費を賄えるかな、という状況ではありますが、以前のような余裕はありません。
今は、少しでも家計の足しになればと、新しい副業に挑戦できないか模索中です。
でも、今は「自分にとって何が一番大切か」を見失わないようにしたいと思っています。
お金やキャリアも大切だけど、今の私にとっては、心穏やかに不妊治療と向き合い、自分自身を大切にすることが最優先。そう思えるようになりました。
おわりに:あなたにとっての「心地よい選択」を
不妊治療と仕事の両立は、本当に、本当に大変な道のりです。
周りと比べて焦ったり、自分を責めてしまったりすることもあるかもしれません。
仕事を続けることも、働き方を変えることも、一度仕事から離れることも、どれも間違いではありません。
大切なのは、自分自身を大切にしながら、納得のいく選択をすること。
私の体験が、ほんの小さなヒントになれたなら嬉しいです。
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