「国の政策は、私たちの切実な願いに応えられていると感じますか?」
不妊治療は、多くの夫婦にとって、人生の大きな岐路であり、経済的、肉体的、そして精神的にも大きな負担を伴います。
特に、仕事を続けながら治療を行う場合、両立の難しさは計り知れません。私自身も不妊治療を経験する中で、仕事との両立の難しさ、そして政策への期待と現実とのギャップを痛感してきました。
そんな中、NPO法人Fineのサイトより参院選2025 政党公開アンケート【不妊・不育症患者への政策について】が公開されています。
2025年7月14日時点での回答状況ですが、各政党の様々な意見が出揃ってきています。
今回は、このアンケート結果を基に、各党の不妊治療への向き合い方を比較分析していきたいと思います。
「両立支援」に関する各政党のスタンス比較:温度差の背景は?
まず、多くの働く人が直面するであろう「不妊治療・不育症治療と仕事の両立支援」について、各政党がどのように考えているのかを見ていきましょう。アンケートでは、「現状の配慮で十分か」という問いに対し、各党から様々な回答が寄せられました。
【両立支援に関する各党の回答】
政党名 | 回答 |
---|---|
自由民主党 | やや不足 |
公明党 | やや不足 |
立憲民主党 | かなり不足 |
日本共産党 | かなり不足 |
日本維新の会 | かなり不足 |
れいわ新選組 | 全く不足 |
国民民主党 | 「未回答」 |
社民党 | 「未回答」 |
共産党 | 「未回答」 |
みんなでつくる党 | 「未回答」 |
(※上記は、示された情報に基づいていますが、アンケート回答が全て揃っていない可能性も考慮しています。)
この結果を見ると、「やや不足」や「かなり不足」といった回答が多く見られます。
例えば、公明党は、「不妊治療のために利用可能な休暇制度の導入等の環境整備等に取り組む中小企業事業主への助成金の支給等」を提案しています。これは、具体的な支援策として、現場で働く人たちにとって大きな期待を抱かせるものです。実際にこのような制度が整備されれば、多くの人が安心して治療を続けられるようになるでしょう。
一方で、自由民主党は、「やや不足」としつつ、「不妊治療と仕事との両立を支援する企業内制度の導入に向けたマニュアル等の作成や、両立支援等助成金の支給などの施策に取り組んでいる」と回答しています。
これは、具体的な取り組みを示しているようにも見えますが、「実際やってくれるのかはまだまだ怪しい」というのが正直なところです。
私も実際に不妊治療を経験する中で、急な体調不良や通院のために休みを取る必要がありましたが、職場の理解を得ることに苦労した経験があります。
制度が整っていても、それを実際に利用しやすい職場の雰囲気や、個々の状況に合わせた柔軟な対応がなければ、両立は難しいのが現実です。各政党が「不足」と回答していても、その具体的な中身や、国民への理解促進がどのように行われるのか、今後の動向を注視していく必要があります。
経済的支援に関する政策比較:期待と落胆の現実
次に、多くの当事者が切実に願っているであろう「経済的支援」について、各政党がどのように考えているのかを見ていきましょう。アンケートでは、「妊娠支援について、現状の配慮で十分か」という問いに対し、各党から以下の「妊娠支援に関する各党の回答」が出されました。
政党名 | 回答 |
---|---|
自由民主党 | 十分 |
公明党 | やや不足 |
立憲民主党 | かなり不足 |
日本共産党 | かなり不足 |
日本維新の会 | かなり不足 |
れいわ新選組 | 全く不足 |
国民民主党 | 「未回答」 |
社民党 | 「未回答」 |
共産党 | 「未回答」 |
みんなでつくる党 | 「未回答」 |
(※こちらも、回答が全て揃っていない可能性を考慮しています。)
この結果を見ると、「不足」という回答が目立ちます。特に、保険適用や助成金の拡充に前向きな姿勢を示す政党が多いのは心強い限りです。
しかし、ここで気になるのが、自由民主党の回答です。「現状で十分」という回答は、不妊治療の経済的負担の大きさを考えると、正直、私としては悲しくなります。
もちろん、保険適用されたことでかなり助かっているのは事実です。しかし、治療が長期化したり、複数の治療を組み合わせたりすることを考えると、経済的な負担は計り知れないものがあります。
私も治療を進める上で、「回数制限」は大きなネックです。
限られた回数の中で成果を出さなければならないプレッシャーは、精神的にも大きな負担となります。
政治の立場からも、この回数制限の緩和や撤廃に向けて、より踏み込んだ議論を期待したいところです。自由民主党が「現状で十分」と感じているという点は、当事者の現実とは少し乖離しているように思えます。
他の政党が「かなり不足」としている点に期待しつつも、その「条件」がどのようなものなのか、そして具体的にどのような支援策が実現していくのか、私たち自身もアンテナを高く張っておく必要がありますね。
国民への理解促進に関する意見比較:偏見をなくすためにできること
不妊治療は、当事者だけの問題ではありません。社会全体の理解が深まることで、治療を受けやすい環境が生まれ、多くのカップルが希望を持って前に進めるようになります。
ここでは、特にアンケートの「Q4. 国民への啓発・教育(学校・地域・メディアでの情報提供)について、現状の政策で十分だとお考えですか?」に注目し、各政党が国民への情報提供や啓発についてどのような考えを持っているのかを見ていきましょう。
政党名 | 回答 |
---|---|
自由民主党 | 十分 |
公明党 | やや不足 |
立憲民主党 | かなり不足 |
日本共産党 | かなり不足 |
日本維新の会 | かなり不足 |
れいわ新選組 | 全く不足 |
国民民主党 | 「未回答」 |
社民党 | 「未回答」 |
共産党 | 「未回答」 |
みんなでつくる党 | 「未回答」 |
(※ここでは、Q4の回答を中心に記載しています。詳細については元のアンケート結果をご確認ください。)
この結果を見ると、多くの政党が「国民への啓発・教育」について「不十分」であると認識していることが伺えます。特に、れいわ新選組の「全く不足」という回答は、現状への危機感の大きさを物語っています。
特に、私自身が強く感じているのは、「男性不妊の知識が男性側になく、男性側の当事者意識が薄い」という点です。不妊は、カップルの問題であるにも関わらず、依然として「女性だけの問題」といった風潮が根強く残っているように感じます。
報道やメディアで不妊治療が取り上げられることは増えましたが、その多くが女性の体や治療に焦点が当てられがちです。
男性側の体への影響や、不妊に対する心理的な負担、そして治療への参加意識といった側面が、十分に伝えられているとは言えません。
各政党がウェブサイトでの情報発信や相談体制の整備、教育現場での啓発といった施策に言及している点は、評価できます。
学校教育の段階から、生命の誕生や、生殖医療に関する正しい知識を共有する機会を設けることや、メディアが積極的に男性不妊についても取り上げることで、社会全体の意識を変えていくことが重要だと考えます。
総括と今後の展望
これまで、不妊治療と仕事の両立、そして経済的な支援や国民の理解促進といったテーマで、各政党のアンケート結果を比較してきました。全体を通して、各政党が不妊治療を取り巻く様々な課題について認識していることは伝わってきます。
しかし、「国民のニーズにどれだけ真に応えようとしているか」という点では、まだまだ道半ばと言えるでしょう。例えば、自由民主党の「現状で十分」という回答には当事者の現実とのギャップを感じさせます。
どの政党でも、実際に取り組んでくれるのかは、今までの政策に対する実績を見て信じるしかないという正直な気持ちがあります。また、不妊治療という観点だけで政党を選ぶわけにもいきません。
だからこそ、私たちは、今回ご紹介したようなアンケート結果を参考に、それぞれの政党の政策を冷静に比較し、自分たちの声がより届くであろう政党を、そして私たち自身の選択肢を見極めていく必要があります。
ぜひ、各政党のウェブサイトなどもチェックしていただき、さらに詳しい情報を調べてみてください。
不妊治療は、当事者だけの問題ではなく、社会全体で考えていくべきテーマです。未来の世代が、より安心して子どもを迎えられる社会を、みんなで作っていきましょう。
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