やっと終えた採卵。
ですが、その安堵も束の間「なんだかデリケートゾーンがムズムズとかゆい…」「おりものがいつもと違う気がする…」といった、新たな悩みに戸惑っていませんか?
実はそれ、採卵後に感染予防のために処方された抗生剤が原因で起こる「膣カンジダ」かもしれません。
何を隠そう、私自身も採卵後に処方された抗生剤を飲み終えた頃、経験したことのないデリケートゾーンのかゆみと、ポロポロとしたおりものに「何これ!?」とパニックになった経験があります。
この記事では、
- なぜ採卵後の抗生剤でカンジダになってしまうのか
- つらい症状への具体的な対処法
- 一番気になる「胚移植への影響」
について、私の体験談も交えながら詳しく解説していきます。
そもそも、なぜ採卵後に抗生剤を飲む必要があるの?
「カンジダになるくらいなら、抗生剤を飲みたくないな…」と思ってしまうかもしれませんが、採卵後に処方される抗生剤には、とても大切な役割があります。
採卵は、膣から細長い針を刺して卵巣から卵子を吸引する、体にとっては外科的な処置の一つです。目には見えませんが、膣や卵巣には小さな傷がついています。
この傷から細菌が侵入し、骨盤腹膜炎(こつばんふくまくえん)などの重い感染症を引き起こすのを防ぐために、抗生剤が処方されるのです。
もし重い感染症にかかってしまうと、高熱や下腹部痛に苦しむだけでなく、その後の妊活スケジュールにも大きな影響が出てしまう可能性があります。
つらい副作用は避けたいですが、まずは処方された抗生剤を医師の指示通りにきちんと飲み切ることが、自分の体を守り、未来の妊娠へと繋がる大切なステップだと理解しておきましょう。
抗生剤でなぜカンジダに?そのメカニズムを分かりやすく解説

では、なぜ感染症を防ぐための抗生剤がかゆみやおりもの異常といった不快な症状を引き起こしてしまうのでしょうか。
良い菌もやっつけてしまう抗生剤の「副作用」
私たちの膣の中は、「デーデルライン桿菌(かんきん)」という乳酸菌の一種(いわゆる善玉菌)がたくさんいて、膣内を酸性に保つことで、他の雑菌(悪玉菌)が増えるのを防いでくれています。この善玉菌と悪玉菌が絶妙なバランスを保っているおかげで、膣内は健康な状態が維持されているのです。
しかし、抗生剤は非常に優秀な薬であるため、悪い菌だけでなく、膣を守ってくれている善玉菌まで攻撃してしまいます。
膣内の善玉菌が減ってしまうと、これまでおとなしくしていた「カンジダ菌」というカビ(真菌)の一種が、「今がチャンス!」とばかりに増殖し始めます。このカンジダ菌が異常に増えてしまった状態が、「膣カンジダ症」なのです。
つまり、抗生剤は感染症という大きなリスクを防いでくれる一方で、副作用として膣内の菌バランスを崩し、カンジダを発症しやすくしてしまう、というわけです。
不妊治療中のストレスやホルモンバランスも一因に
さらに、不妊治療中は採卵への緊張や今後のスケジュールへの不安など、ただでさえ大きなストレスがかかりがちです。
こうしたストレスや疲労、睡眠不足は免疫力を低下させるため、カンジダ菌が増えやすい環境を作る一因とも言われています。
これってカンジダ?採卵後によくある症状セルフチェックリスト

「このかゆみ、もしかして…?」と思ったら、ご自身の症状と照らし合わせてみましょう。
- かゆみ
とにかくデリケートゾーン(外陰部)が我慢できないほど強くかゆい。日中はもちろん、夜、布団に入って体が温まると特にかゆみが増して眠れないことも。ムズムズ、ヒリヒリとした刺激感を伴う場合もあります。 - おりもの
白くポロポロとした、カッテージチーズや酒粕、お豆腐、ヨーグルトのようなおりものが出ます。普段のおりものシートでは間に合わないくらいの量が出ることも。ニオイはあまりないか、少し甘酸っぱいような独特のニオイがすることがあります。 - 痛み・ヒリヒリ感
外陰部や膣の粘膜が炎症を起こして赤く腫れ、ヒリヒリとした痛みを感じます。排尿時にしみたり、トイレットペーパーで拭くときに痛みを感じたりすることも。 - 見た目
外陰部が炎症で赤くただれたような状態になることがあります。
これらの症状に一つでも当てはまるものがあれば、膣カンジダの可能性が高いと考えられます。
私の場合も、最初は「ちょっとムズムズするかな?」程度だったのが、翌日には「いてもたってもいられない!」というかゆみに変わり、おりものを見て「これは絶対におかしい」と確信しました。
※ただし、これらの症状は他の病気の可能性もゼロではありません。自己判断はせず、気になる症状があれば必ず次のステップに進んでくださいね。
【重要】採卵後にカンジダかも?と思ったら。正しい対処法

「もしかしてカンジダかも…」と思ったら、不安で焦ってしまいますよね。この時期に一番大切なのは、自己判断で動かずに、まずは専門家である医師に相談することです。
まずは処方元の不妊治療クリニックに電話で相談!
「婦人科に行くべき?」「皮膚科?」と迷うかもしれませんが、最初に連絡すべきは、抗生剤を処方してくれた不妊治療クリニックです。
- 治療の経緯をすべて把握してくれているから
クリニックは、あなたが採卵を行い、どんな薬を飲んでいるかをすべて把握しています。「採卵後に処方された抗生剤を飲んだ後からかゆみが出てきた」と伝えれば、医師や看護師はすぐに状況を理解してくれます。 - 今後の移植スケジュールに関わるから
これが最も重要です。近々、胚移植を控えている場合、カンジダの治療を優先する必要があります。クリニックに連絡すれば、治療と移植のスケジュールをどう調整するか、的確な指示をもらえます。
電話で症状を伝えれば、「一度見せに来てください」となるか、「近くの婦人科で診てもらって、診断結果を教えてください」となるか、クリニックの方針によって指示は様々です。まずはその指示に従いましょう。
市販薬は使ってもいい?移植周期の自己判断はNG
ドラッグストアに行くと、膣カンジダの再発用の市販薬が売られています。過去にカンジダになったことがある方なら、「いつもの薬でいいかな」と思ってしまうかもしれません。
しかし、採卵後・移植周期というデリケートな時期に、医師の診断なく市販薬を使うのは絶対にやめましょう。
もしカンジダではなかった場合、症状を悪化させてしまう可能性があります。また、薬の成分が移植に影響しないとも限りません。必ずクリニックに相談し、処方された薬で正しく治療することが、結果的に一番の近道になります。
私もすぐにクリニックに電話し、「〇日に採卵した者ですが、抗生剤を飲み終えてからかゆみとおりものが気になります」と伝えたところ、「おそらくカンジダでしょう。一度診察に来てください」と案内され、膣錠を処方してもらいました。
一番気になる…カンジダは胚移植に影響する?

デリケートゾーンの不快な症状もつらいですが、不妊治療をしている私たちが何より心配なのは、「このせいで、大切な胚移植ができなくなったらどうしよう…」ということですよね。
結論から言うと、多くのクリニックでは、膣カンジダをきちんと治療してから移植に臨むのが一般的です。
「え、延期!?」と聞くと、がっかりしてしまいますよね。私も「せっかく採卵まで頑張ったのに…」と落ち込みました。
しかし、私の場合は少し特殊なケースだったかもしれません。クリニックで膣錠を処方してもらったものの、なかなかスッキリ治りきらずにモヤモヤしていたところ、採卵後の生理がきた途端、あの不快だったかゆみやおりものがピタッと落ち着いたのです。
経血によって膣内の環境が洗い流され、菌のバランスがリセットされたのかもしれません。
このように、生理が来ることで自然に症状が軽快するケースもあるようです。ただ、これはあくまで一個人の体験談。症状が長引く場合や、かゆみが我慢できない場合は、きちんと治療することが大前提です。
いずれにせよ、カンジダの治療は、通常、膣錠や塗り薬を使えば1週間程度で良くなることがほとんどです。きちんと治療すれば、その後の移植に影響することはまずありません。
もう繰り返したくない!今日からできるカンジダ予防策5選
一度経験すると、「もう二度とあのかゆみは味わいたくない!」と思いますよね。カンジダは体質的に繰り返しやすいとも言われますが、日々のちょっとした心がけでリスクを減らすことができます。特に不妊治療中は、普段以上にデリケートゾーンをいたわってあげましょう。
- ムレを防いで、清潔に
カンジダ菌は、高温多湿の環境が大好き。デリケートゾーンをムレさせないことが一番の予防策です。- 通気性の良い下着を選ぶ:締め付けの少ない、綿やシルク素材のものがおすすめです。
- おりものシートやナプキンはこまめに交換する:汚れていなくても、2〜3時間に一度は替えましょう。
- 濡れた水着や汗をかいた服はすぐに着替える:雑菌が繁殖する原因になります。
- デリケートゾーンは「洗いすぎない」
清潔にしようと思うあまり、石鹸やボディソープでゴシゴシ洗うのは逆効果。膣内を守っている善玉菌まで洗い流してしまい、かえってカンジダになりやすい環境を作ってしまいます。お湯で優しく洗い流す程度で十分です。 - 食生活で体の内側からケア
腸内環境と膣内環境は繋がっていると言われます。腸内の善玉菌を増やす食生活を心がけましょう。- ヨーグルト、納豆、味噌などの発酵食品を摂る
- オリゴ糖や食物繊維で善玉菌のエサを増やす
- 甘いものやパン(糖質)を控える(糖質はカンジダ菌の大好物です!)
- 免疫力を落とさない
ストレスや疲労は免疫力を低下させ、カンジダ菌が勢いづく原因になります。不妊治療中は難しいかもしれませんが、意識的にリラックスする時間を作りましょう。- 睡眠をしっかりとる
- 湯船にゆっくり浸かる
- 適度な運動で血行を良くする
- 採卵が決まったら「予防」を意識する
次の採卵が決まったら、「また抗生剤を飲むな」と予測ができます。採卵前からヨーグルトを積極的に食べ始めるなど、予防的なセルフケアを意識するのもおすすめです。
まとめ
今回は、採卵後の抗生剤が原因で起こる膣カンジダについて、私の体験談を交えながら解説しました。
- 採卵後の抗生剤は、感染症を防ぐための大切なお守り。
- 抗生剤で膣内の善玉菌が減ると、カンジダ菌が増殖しやすくなる。
- 「強いかゆみ」と「ポロポロしたおりもの」が特徴的なサイン。
- 「おかしいな」と思ったら、自己判断せず、まず不妊治療クリニックに電話!
- きちんと治療すれば移植への影響はなし。焦らず、まずは治すことに専念する。
採卵という大きなステップを乗り越えた後の思わぬトラブルは、心身ともに本当につらいものです。
しかし、膣カンジダは不妊治療中に多くの人が経験するマイナートラブルの一つ。「私だけじゃないんだ」と思って、あまり自分を責めないでくださいね。
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